そうそう、あれはたしか1月30日のことでした。フジサンケイグループの広告大賞・クリエーティブ部門の審査会を終えて、井筒監督としばし、我々関西人が選ぶ作品がいつも選ばれないのは、審査基準にある「大衆性」の捉え方が、東京の審査員と違うのかもしれないという話をした後、車に乗りこんで次の目的地、「白金の都ホテルまでお願いします」と告げたところ、運転手さんから返ってきた言葉が「せいこうしょうの先ですね」。一瞬、何を言っているのか分からなかったのですが、どうやらホテルの横にある、加藤清正公を祀った鶴林寺、通称・清正公(せいしょうこう)のことを言い間違えたのではないかと気づきました。
「性交渉って、誰がこんな時間からHをしに行くねん!」「だいいち、清正公に失礼やろ!」、聞けばこの運転手さん、鹿児島から上京したばかりで、うろ覚えの地名を口にしたばかりに、ここぞとツッコまれた理不尽さに落ち込んでいたかもしれません。少しばかり自責の念に駆られながら、秘書を務めてくれていた澤君に電話を入れると、「このはなくから電話がありました」とのこと、「いったい大阪の此花区から何の用があって電話が入ったのかな?」と思いつつ、告げられた番号に電話を掛けると、「はい木ノ葉のこです」。木ノ葉さんとは、お仕事をしたことは無かったのですが、かつてNTVの「噂のチャンネル」やドラマに出ておられたのを拝見していたこともあって、偶然お目にかかった赤坂プリンスの喫茶でご挨拶をさせていただいたばかりだったのです。
思わず、弘兼謙司さんが週刊朝日で連載されていたコラムに紹介されていた、「パプアニューギニア」を「パパは牛乳屋」、「バングラデシュ」を「ぼんくら亭主」と聞き違えたエピソードを思いだしてしまいました。そうそう、まだ私が吉本にいた頃、当時入社したばかりの女性マネージャーに、「今日は滋賀県の何処へ行くの?」と尋ねたら、「はい、よねはらです」と答えたので、「そら、米原(まいばら)や!」と教え、「誰を連れて行くの?」と聞くと、「はい、さんにんやつさんです」と答えたので、「そら、三人奴(さんにんやっこ)さんやろっ!」とツッコんだことがありました。たしか道下君というその女性社員は、その後に結婚をして退職しましたが、今でも主人を囚人と取り違えているのではないかと密かに心配をしています。
ちょうど、この年の3月1日から、上京したてのタクシーの運転手さんや、澤君や道下君でなくても、名前を間違えそうな「タスポ」(taspo)という、ややこしい名前のカードが導入されました。未成年者の喫煙防止策の一環としてつくられた、タバコ自販機専用の成人識別ICカードで、宮崎と鹿児島の両県から始めて、近畿では6月から、関東では7月から導入され、それ以降はこのカードがないと、自販機でタバコを買うことが出来なくなるようになるというのです。どこか、釈然としないままに私も申し込んだのですが、それにしても、落語の前座噺の「寿限無」に出てくる「パイポ パイポ パイポのシューリンガン」のくだりを思わせる、このややこしい名前はどこから来たのでしょう?たしか、タバコへのパスポートという意味で、TobacooとAcces(Age)とPassportを足して付けられたものらしいと聞いたのですが、発行されて2年後の2010年には、全喫煙者の37.3%にあたる971万枚が発行されたといいますから、日本人って本当に真面目な民族だなぁと思います。もっとも、今では、タバコを自販機ではなく、コンビニで買う人が増えて、私もコンビニで購入する際に「私は未成年ではありません」という画面にタッチをして、「はい」と押すのを求められるのですが、その都度、「この私が未成年に見える?」と聞きながらタッチをするのを愉しんではいるのですがね。
これは性交渉(せいこうしょう)
清正公(せいしょうこう)
三人奴さん