木村政雄の私的ヒストリー

HISTORY

第話

 そうそう、ナポリで泊まったホテルが、なぜか「アメリカン・ホテル」で、思わず「なんでやねん!」とツッコみたくなったのを憶えています。5月3日は、そのホテルを出て、ナポリの沖合ティレニア海に浮かぶカプリ島の青の洞窟へ行く予定だったのですが、あいにく海が時化ていて、くぐる際に頭を船のへさきより下に沈めないといけない洞窟に入れるかどうか、「行ってみないと分からない」というので、私たちは他の何人かとグループを離れて、ナポリ駅から列車で、次に行く予定のローマへ向かい、テルミニ駅から地下鉄でスパーニャ駅へ出て、スペイン広場前のローマ随一の高級ブランド街コンドッティ通りに差し掛かると、なぜかブータレていた妻の機嫌が一変、お陰で市中引き回しの刑にあいました。

 夜の7時頃に、宿泊先のイビス・ローマ・マリアナホテルで、カプリ島へ行った皆さんと合流して、皆で夕食を済ませたのですが、聞くと、やはり青の洞窟には入れなかったようで、「私たちもカプリ島をスルーしてローマに来ればよかった」という声も聞かれました。ただこればかりは天候のせいですから、ガイドさんを責めるわけにはいきません。このホテルには3・4日と連泊をするのですが、これも「ローマは1日にしてならず」という言い伝えを意識してのことかもしれません。

 4日は気を取り直して、朝8時から小雨の降る中をローマの歴史地区を観光。コロッセオやサンピエトロ大聖堂、パンテオンなどを巡り、映画「ローマの休日」で知られたスペイン広場からトレヴィの泉へ行った際、一応観光客らしく振る舞おうとコイン投にトライしました。噴水を背に、右手で左肩越しにコインを1枚投げると「再びローマに戻って来られる」、2枚だと「告白した愛が叶う」、3枚だと「いやな奴と別れられる」というのです。私は3枚、いや1枚を投げただけなのですが、その後訪れたサンタマリア・イン・コスメディン教会にある真実の口の前に立った時、妻から「手を入れて、何枚投げたか言ってごらん」と言われて、手を差し入れたものの、何事もなく終わりほっと胸をなでおろしました。本当は3枚も投げるのが惜しかっただけなんですがね。こうして翌6日の夜8時10分にローマ空港を飛び立ち、来た時と同じように北京でトランジットをして、夜の9時、10日ぶりに成田に着きました。

 翌日からは、番組収録や会議、原稿執筆、講演という日常が戻ってきたのですが、なぜかその合間を縫って、17日に大阪の松竹座へ芝居を見に行っています。作詞家・星野哲郎さんと奥様の朱實さんとの情愛を描いた物語で、田中健さんと、名取裕子さんが演じて、教え子の水前寺清子さんが本人役で出演していました。星野さんは、「男はつらいよ」の主題歌をはじめ、「黄色いサクランボ」、「兄弟仁義」、「昔の名前で出ています」、「アンコ椿は恋の花」など数々のヒット曲をつくられた大作詞家で、この方が糟糠の妻である朱實さんにあてた「妻への詫び状」というタイトルの芝居だったと思います。この作品に出ていた俳優さんで、予てから顔見知りだった、にわつとむさんから話を聞いて出かけたのですが、ストーリーはともかく、上演時間3時間45分というのは、いささか長すぎる気がしました。帰り際、私もいつか、「妻への詫び状を書く時が来るのかな?」という思いが頭をよぎりましたが、書くならむしろ、元高槻市長の江村利雄さんが書かれて、2001年にNGKで愛川欽也さんに公演していただいた「夫のかわりはおりまへん」の方にしようと思い直しました。

アメリカン・ホテル(ナポリ)

 

青の洞窟(ナポリ)

 

ナポリ

 

コンドッティ通り

 

コロッセオ(ローマ)

 

サンピエトロ大聖堂(ローマ)

 

パンテオン(ローマ)

 

スペイン広場(ローマ)

 

トレビの泉でコイン投げ(ローマ)

 

真実の口(ローマ)

 

2010年にご逝去されました

 

 

 

にわつとむさん

 

 

 

 

 

江村利雄さん