木村政雄の私的ヒストリー

HISTORY

第話

 6月15日に舶来寄席も終り、一息ついた頃でした。「アメリカン・バラエティ・バン」でお世話になった作家の高平哲郎さんから、「農村を舞台にしたミュージカル劇団があるから、一度見ては?」というご連絡をいただいて、「じゃ、ぜひ!」と返したものの、実際に見ることはなく、そのままになっていました。ブロードウェイやロンドンでミュージカルを見ることはあっても、日本のミュージカルには全く興味がなかったのです。正確に言うと、たった一度だけ見たことはあったのですが、日本語で話していた人間がそのまま進行をせずに、いきなり歌に入ってしまう違和感に耐えられなかったのです。しかもラウル・シャニュイ子爵やムッシュー・アンドレって、「あんた、どこから見ても日本人やろっ!」って思ってしまったのです。

 そんなトラウマもあってか、高平さんからのお話をすっかり忘れていたのですが、再度ご連絡をいただいて、7月8日、避暑を兼ねてというより、むしろそちらがメインだったのですが、わざわざ札幌の地まで飛んで、北1条にある教育文化会館で「ムラは3・3・7拍子」という、農村を舞台にしたミュージカルを見たのです。「どうせ・・・」と思いながら見始めていたのですが、驚きました!いつの間にか芝居に魅せられていったのです。

 誰一人著名な人など出ていない舞台なのに、見ている方の心をとらえて離さないのです。終わった後は1100人の観客の皆がスタンディング・オベーション。それもよくあるように、決まり事としてのおざなりのものではなく、心から感動を共有したものでした。

 演技も決して優れたテクニックを備えているわけでもないのですが、そのひたむきな思いが、見ている者の心に刺さってくるのです。高校野球を見ていて、9回ツー・アウトに、ビハインド側の選手が、凡打に終わり、間に合わないと知りながらファーストにヘッド・スライディングをした時、「よくやったぞー!」とエールを送りたくなる思いとでも言えばいいのでしょうかね。

 顔が上気した観客たちとともに、出演者に見送られながら会館を後にしたのですが、そのあとに知人たちと訪ねた店の料理が、いつもに増して、おいしく感じられたのを憶えています。

「ムラは3・3・7拍子」のポスター

 

 

「ムラは3・3・7拍子」のステージ

 

 

こんなに動員しました

 

 

札幌市教育文化会館

 

 

主宰者で、作・演出の石塚克彦さん

 

 

創業メンバーとして作曲・編曲・演奏の他に

イラストやロゴデザインまで担当していた寺本建雄さん

 

 

女優の天城美枝さん

 

 

俳優の小山田錦司さん